個展4日目


水曜日に引き続きパソコンで作業をしたかったので、今日は電車でCOYAMAさんへ向かった。とはいいつつ、実はパソコンを持って行ったってチャリ通できるのではと思っている。
多分、近いうちに試すと思う。

最寄り駅から武蔵小杉駅へ向かう途中、電車は家の方へ向かって走る。
つまり方角的には、最寄り駅(電車)→自宅→武蔵小杉になっており、自宅から最寄駅まで向かうのは一種の逆走なのである。

こういう時に思うのだが、電車の走行中にボタンを押すと窓が開いて、強力なバネによって座席がびよーんと跳ね上がり、外に出たりとかできないだろうか(まあ無理)。
着地に伴う危険は、めいめいがパラシュートを持って電車に乗れば解決である(まあ無理)。

知り合いが2組来てくれた。
散歩繋がりのライター仲間と何度か利用させてもらっている古本屋さんが見にきてくれた。

個展で来てくれる人というのは、その時の自分の心の置きどころみたいなものを反映していると思う。
ライターの仕事も去年新しく始めさせてもらったことだし、古本屋さんも本格的にお店を回って好きになったのは割りと最近だったりする。

どちらも、去年の個展の時点では考えられないことだ。
緩やかに時間が過ぎているように見えても、実際は1年半で色々なことが変わっている。しかもライターの仕事は、去年の個展が遠因になっていたりして、ちゃんと地続きになっているところもある。

知らない人も何人か来てくれた。
小学校の教員をされていたという方、個展の告知を見て興味を持ってくれた方(2人目!嬉しい!)など。



個展の会期中限定メニューのレモンケーキ。
COYAMAさんが自分の作品をイメージして作ってくれた。レモンがしっかりと効いていておいしい。コーヒーの苦味ともよくマッチする。

会期中限定メニューである上に、先週も食べている。
何で初日のブログで真っ先に載せないんだという話である。写真を撮り忘れたのである。



またもやCOYAMAさんが持ってきてくれた本。
右側の「フィリップワイズべッカーの郷土玩具十二支めぐり」、これがとんでもなく危険な本だった(いい意味で)。

中身は、フィリップ・ワイズベッカー(フランス人アーティスト)が日本全国の十二支の郷土玩具を作っている場所を巡った紀行文で、郷土玩具のイラストや工房の写真が添えられているというもの。

ところで自分は今、世田谷区にある商店街の街灯を観察する記事を、街灯のイラストを添えつつ描いたりしている。
そして1年ほど前に、「今のスタイルの絵(空想生物)と街歩きが融合したらどうなるんですかねえ。」と言われたことがある。

その時はなるほどと思いつつも、街灯を描く時の思考回路と絵を描く時の思考回路が全く違うので、融合できるイメージが湧かなかった。
ただ根っこの部分ではつながっているという確信があって、これは今後しばらく頭の片隅に残り続けるテーマだなと思った。そして融合のイメージが湧くまでは2年くらいかかるなと思った。

このワイズベッカーの本には、作業場に無造作に置かれている工具類や街並みの写真が出てくる。これがたまに何らかの生き物に見えてくるのだ(ワイズベッカー自身がそう書いているところもある)。

そこで閃いてしまった。
普段路上観察をしている時に面白いと思った形をモチーフにして、空想の生き物を描いてしまえばいいのは。

例えば、こういうのがあったりする。
これはなんとなく4足歩行の生き物に見える。

融合のヒントになる素材はもう画像フォルダの中にあったのだ。

あまりにも思いがけないタイミングで閃いたせいで、これが一時の熱に浮かされた状態なのか、本当に核心を突くような発見なのかよく分からない。
ただ、イメージというかやってみたいことは瞬時にぶわあっ!と広がった。本当に危険な本である。

一方で、性急に結論を出すべきないことだとも思う。 無理にやる必要もない。
自分の作品のなかで一番大事にしたいところは、シルエットである。

そのシルエットのベースを自分で作らずに、街中の偶然の事象に委ねてしまうことに不安を覚えたりもする。



最近思うのだが、結局のところ絵描きはこれまで歩んできた紆余曲折の軌跡がそのままその人の立ち位置になり、そしてそのまま個性になるのではないかと。

逆にいうと、何かから影響を受けることから逃れることができない。
それならいい加減、自分の立ち位置というか落としどころを決めてしまいたいう思いもある。

ゲームの悪役を描くことから始まって怪獣や空想の生き物を描くこと、街歩きが好きで路上観察や街灯観察をすること、この2つが自分の重要な立ち位置である。

そして両者は「ここではないどこか別の世界に触れたい」という思いによって通底している。多分。

この2つが交わった地点となりうる表現手法のヒントを、フィリップ・ワイズベッカーの本はいきなり目の前に提示してきた。いやー、危険な本だよこれは。

もちろんすぐに買いました。今はすぐ隣にあります。



ということで、今日は色々な発見があり、良い日でした。

outa.waruagaki
都内在住。2016年2月までタイに2年半在住。絵を描いたり、街灯のことを書いたり、散歩したり。

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